期待するな、ゆだねろ。──他人への期待を引き算する、心が軽くなる考え方

思考の整理

1. 「やってくれるはず」が裏切られたとき、あなたは勝手に傷ついている

あなたは、誰かのために、何かをした。

相手のことを思って、手を尽くした。
だから、心のどこかで、こう思う。
「これだけやったのだから、相手も、同じくらい、返してくれるはず」と。

あるいは、こうだ。
「これくらい、言わなくても、気づいてくれるはず」
「家族なら、わかってくれるはず」

ところが、相手は、あなたが思ったようには、動かない。
返ってくると思っていたものが、返ってこない。
気づいてくれると思っていたことに、気づいてもらえない。

そして、あなたは、傷つく。「どうして、わかってくれないのか」と。

ここで、その傷つきの正体を、はっきりさせておきたい。

あなたを傷つけているのは、相手の行動そのものでは、ない。
「やってくれるはず」と、あなたが勝手に抱いた、期待のほうだ。

相手は、ただ、いつも通りに、振る舞っているだけかもしれない。
だが、あなたの中に「こうしてくれるはず」という期待があると、その通りにならなかったとき、自分で自分を、傷つけてしまう。

▼ 今すぐ、できる確認
□ 最近「どうして、こうしてくれないのか」と、誰かにがっかりしたことを、一つ思い出す
□ そのとき、自分の中に「こうしてくれるはず」という期待が、なかったかを、確かめる
傷つきの手前に、必ず、その期待があったはずだ。


2. 期待とは、相手を、自分の思い通りに動かそうとすることだ

では、なぜ、期待は、これほど人を苦しめるのか。

それは、期待の正体が、あなたが思っているものと、違うからだ。

期待とは、ただの願いでは、ない。「相手は、こう動くべきだ」という、あなたが一人で書いた、台本のことだ。

たとえば、自分の誕生日を、恋人に覚えていてほしい、と思うとする。
あなたの頭の中には、すでに、台本がある。
「相手は、私の誕生日を覚えていて、お祝いの言葉をくれる」という台本だ。

だが、相手は、あなたの書いた台本を、読んでいない。
そもそも、そんな台本があることすら、知らない。
だから、相手は、台本通りには、動かない。

そして、台本通りに動かない相手を見て、あなたは「裏切られた」と感じる。
だが、相手は、あなたの台本の存在を、知らなかっただけだ。

つまり、期待するとは、相手を、自分の書いた台本の通りに、動かそうとすることだ。
他人は、自分の思い通りには、動かない。
だから、期待すればするほど、その通りにならず、苦しくなる。

▼ 今すぐ、できる問い直し
□ 誰かに対して抱いている「こうしてほしい」を、一つ思い浮かべる
□ それを、相手に、はっきり言葉で伝えたことがあるかを、確かめる
伝えていないなら、それは、相手の知らない、自分だけの台本だ。


3. 佐藤健一が、他人への期待を引き算するための、三つの作法

ここから、私、佐藤健一が、他人への期待を手放すために、実際にやっていることを、開示する。

他人に冷たくなる話では、ない。
自分も相手も、楽になるための、心の置き方だ。

一、「やってくれるはず」を「やってくれたら、ありがたい」に変える

誰かに何かをしてほしいとき、私は、心の中の言葉を、変える。

「やってくれるはず」と思うと、やってくれなかったとき、不満が残る。
だが、「やってくれたら、ありがたい」と思っておくと、どうなるか。

やってくれなければ、それが、当たり前。
やってくれたら、ありがたい、と感謝が生まれる。

同じ出来事でも、心の言葉を変えるだけで、不満が、感謝に変わる。

二、見返りを期待して、何かをしない

誰かに何かをしてあげるとき、私は、見返りを、期待しないようにしている。

「これだけやったのだから、相手も返してくれるはず」
この気持ちが、後で、自分を苦しめる。返ってこなかったとき、裏切られた気持ちになるからだ。

だから、何かをするときは、見返りのためでは、なく、自分が、してあげたいから、する。
そう決めておけば、相手が何を返そうと、自分の心は、揺れない。

三、相手の課題と、自分の課題を、切り分ける

相手が、どう動くか。相手が、どう感じるか。
それは、相手の課題であって、あなたが、どうこうできるものでは、ない。

あなたにできるのは、自分の行動を、決めることだけだ。
相手の反応は、相手にゆだねる。

「自分にできること」と「相手にしかできないこと」を、切り分ける。
相手の領分にまで、踏み込んで期待するのを、やめる。

▼ 今日、できる実践
□ ① 「やってくれるはず」を「やってくれたら、ありがたい」に、言い換える
□ ② 誰かに何かをするとき、見返りを、期待しない
□ ③ 相手がどう動くかは、相手にゆだねる、と切り分ける


4. 期待を手放すことは、相手を見捨てることではない。相手を信じて、ゆだねることだ

ここで、はっきりと、誤解を、解いておきたい。

他人への期待を手放す、と聞くと、こう思うかもしれない。
「もう、誰にも期待せず、人を信じるのをやめて、冷たく生きろということか」と。

違う。まったく、逆だ。

この媒体で繰り返し伝えてきたことを、もう一度、書く。
引き算とは、ただ、突き放すことでは、ない。相手を信じてゆだねるために、相手を思い通りに動かそうとする気持ちを、引き算することだ。

期待を手放すというのは、相手に、関心をなくすことでは、ない。
相手を、自分の台本通りに動く駒として見るのを、やめることだ。

そして、相手を、自分とは違う考えを持った、一人の人間として、信頼する。
「この人は、この人なりに、考えて動く」と、その選択を、尊重する。

これが、期待を手放した先にある「ゆだねる」ということだ。
相手を、コントロールしようとするのをやめて、信じて、任せる。

期待を手放すほど、あなたは、相手の行動に、一喜一憂しなくなる。
そして、相手も、あなたの台本から自由になり、のびのびと、あなたの前にいられる。

▼ 今、できる問い直し
□ 誰かに「こう動いてほしい」と、強く期待している関係を、一つ思い浮かべる
□ その期待が、相手を信じる気持ちか、思い通りに動かしたい気持ちか、を考える


5. 結論:期待を手放した分だけ、あなたの心も、相手との関係も、軽くなる

最後に、ひとつ、覚えておいてほしい。

他人は、あなたの思い通りには、動かない。これは、変えられない事実だ。
だが、その他人に、思い通りに動くことを期待するのをやめた分だけ、あなたの心は、軽くなる。

  • あなたを傷つけているのは、相手ではなく、自分が抱いた期待だ
  • 期待とは、相手を、自分の台本通りに動かそうとすることだ
  • 期待を手放すことは、見捨てることではなく、信じてゆだねることだ

期待を手放すと、相手の一つひとつの行動に、振り回されなくなる。
そして、見返りを求めずに人と関われるようになると、関係そのものが、驚くほど、軽くなる。

──最後に、ひとつだけ、約束してほしい。

今、誰かに抱いている「やってくれるはず」という期待を、一つだけ、思い浮かべてほしい。
そして、その期待を、そっと、手放してほしい。

「相手は、私の思い通りには動かない。それでいい、と信じてゆだねる」

そう、心の中でつぶやきながら、手放してほしい。

一つの期待を手放して軽くなった心が、相手を思い通りに動かそうとして、すり減り続けてきたこれまでの関係を、ずっと穏やかなものに、変えていく。

他人に期待して、勝手に裏切られた気持ちになる時代は、もう、終わりだ。

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