1. 「ここまでやったから」が、やめどきを、見えなくする
映画館で、お金を払って、映画を見始める。
ところが、三十分も経つと、まったく面白くないと、気づく。
それでも、あなたは、席を立たない。
「せっかく、お金を払ったのだから」と、つまらない映画を、最後まで、見続ける。
あるいは、こうだ。
何年も続けてきた習い事。もう、気持ちは離れている。
それなのに、「ここまで続けてきたのだから」と、やめられない。
ここで、やめられない、本当の理由を、はっきりさせておきたい。
あなたを縛っているのは、「これから」では、ない。すでにかけてしまった「これまで」を、惜しむ気持ちだ。
払ったお金。費やした時間。注いできた労力。
それらが、もったいなくて、手放せない。
この「もったいない」という気持ちが、本当はもう来ている「やめどき」を、見えなくしている。
▼ 今すぐ、できる確認
□ 今、なんとなく続けているのに、気が乗らないことを、一つ思い浮かべる
□ それを続ける理由が「これから良くなるから」か「ここまでやったから」かを、確かめる
「ここまでやったから」なら、あなたは、過去に縛られている。
2. あなたは、取り戻せない過去のために、これからを差し出している
ここで、冷静に、考えてみてほしい。
これまでにかけた、お金や、時間や、労力。
それらは、ここでやめても、戻ってこない。
そして、このまま続けても、やはり、戻ってこない。
つまり、すでにかけてしまったものは、やめても続けても、もう、取り戻せないのだ。
それは、これからの判断とは、本来、何の関係もない。
それなのに、私たちは、「もったいない」と言って、続けてしまう。
これが、何を意味するか。
取り戻せない過去を惜しむために、まだ自由なはずの「これから」の時間まで、同じことに縛りつけているのだ。
つまらない映画を最後まで見るのは、戻らない入場料のために、これからの二時間まで、捨てる行為だ。
気の乗らない習い事を続けるのは、戻らない過去のために、これからの時間まで、差し出す行為だ。
以前、後悔を引き算する話を、書いた。
変えられない過去を、握りしめ続けることが、自分を苦しめる、という話だ。
「もったいない」も、同じだ。変えられない過去への執着が、これからの自分を、縛っている。
▼ 今すぐ、できる問い直し
□ 続けるか迷っていることに、これまで何をかけてきたかを、思い浮かべる
□ それは、やめても続けても、もう戻らないという事実を、確かめる
戻らないものは、これからの判断とは、関係がない。
以前、後悔を引き算する話を、書いた。
→ 悔やむな、活かせ。──過去への後悔を引き算する、前を向く考え方
変えられない過去を、握りしめ続けることが、自分を苦しめる、という話だ。
3. 佐藤健一が、「もったいない」という執着を引き算するための、三つの作法
ここから、私、佐藤健一が、「もったいない」という執着を手放すために、実際にやっていることを、開示する。
何でも、途中で投げ出す話では、ない。
過去への執着と、これからの価値を、切り分けるための、具体的な作法だ。
一、「今、ゼロから始めるなら、選ぶか」で問う
続けるか迷ったとき、私は、これまでのことを、いったん忘れて、こう問う。
「もし、今、何もかけていない状態から、ゼロで始めるとして、これを選ぶか?」
ゼロから始めるとしても選ぶものなら、それは、これから価値があるものだ。続ける。
だが、ゼロからは選ばないものなら、あなたは、過去に払ったものだけで、続けている。
この問いが、過去への執着を、取り除いてくれる。
二、かけたものは「戻らない」と認め、これからの損だけを見る
「もったいない」と感じたら、私は、まず、こう認める。
「これまでかけたものは、どうやっても、戻らない」と。
戻らないものを、惜しんでも、意味がない。
だから、過去にかけたものは、いったん、計算から外す。
そして、「このまま続けたら、これから、どれだけ失うか」という、これからの損だけを、見る。
過去の損は、もう、確定している。
見るべきは、これから増える損のほうだ。
三、やめることを「失敗」ではなく「より良い選択」と捉え直す
やめることを、人は、「挫折」や「失敗」だと、感じてしまう。
だから、やめられない。
だが、合わないものを手放して、より価値のあることに、時間を移すのは、失敗では、ない。
それは、限られた時間を、より良く使うための、賢い選択だ。
やめることは、負けでは、ない。
これからの時間を、守るための、前向きな決断だと、捉え直す。
▼ 今日、できる実践
□ ① 迷っていることを「今、ゼロから始めるなら、選ぶか」で、問う
□ ② かけたものは「戻らない」と認め、これからの損だけを、見る
□ ③ やめることを「失敗」ではなく「より良い選択」と、捉え直す
4. 手放すことは、諦めや無責任ではない。続けるべきものを見極めることだ
ここで、はっきりと、誤解を、解いておきたい。
「もったいない」という執着を引き算する、と聞くと、こう思うかもしれない。
「気に入らないものは、何でも、途中で投げ出して、無責任に生きろ、ということか」と。
違う。まったく、逆だ。
以前、続けることについて、書いた。
続けたいことは、負担を小さくして、こつこつ続けるのがいい、という話だ。
今回の話は、それと、矛盾しない。
大切なのは、続けるべきものと、惰性で続けているだけのものを、見極めることだ。
この媒体で繰り返し伝えてきたことを、もう一度、書く。
引き算とは、何でも、投げ出すことでは、ない。「もったいない」という執着を引き算するとは、過去に払ったからという理由だけで続けていることを、見極めて手放すことだ。
本当に大切で、これから価値があるもの。
ゼロから始めるとしても、選ぶもの。これは、手放してはいけない。続けるべきだ。
引き算するのは、そこではない。
削るのは、「ここまでやったから」という、過去への執着だけで、惰性で続けていることだ。
惰性を手放すからこそ、本当に続ける価値のあるものに、時間と力を、注げるようになる。
▼ 今、できる問い直し
□ 続けていることを「これから価値があるもの」と「惰性で続けているもの」に、分ける
□ 惰性のほうだけを、手放せないかを、考える
→ 三日坊主は、意志が弱いからではない。──「続かない」を引き算で解決する3つの方法
5. 結論:過去にいくらかけたかではなく、これから価値があるかで、決める
最後に、ひとつ、覚えておいてほしい。
何かを続けるか、やめるか。
その判断の基準は、過去に、いくらかけたかでは、ない。これから、価値があるかどうか、それだけだ。
- やめられないのは「これから」ではなく「これまで」を惜しむからだ
- 取り戻せない過去のために、自由なはずのこれからを、差し出している
- 判断の基準は、過去にかけた額ではなく、これからの価値だ
すでにかけたものは、もう、戻らない。それは、変えられない。
だが、これからの時間を、何に使うかは、今、あなたが、決められる。
──最後に、ひとつだけ、約束してほしい。
今、「もったいない」という理由だけで、惰性で続けていることを、一つだけ、思い浮かべてほしい。
そして、それに対して、こう、問うてほしい。
「もし今、ゼロから始めるとして、自分は、これを選ぶか?」
そう問うて、「選ばない」と感じたなら、それを手放すことを、考えてみてほしい。
過去への執着を手放して、これからの時間を取り戻せたその瞬間が、「もったいない」に縛られて、合わないことを続けてきたあなたを、本当に価値のあることへと、向かわせてくれる。
取り戻せない過去を惜しんで、これからの時間まで縛られ続ける時代は、もう、終わりだ。


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